片恋シンデレラ~愛のない結婚は蜜の味~
「父さんは幸せだったと思う。父さんの死に顔はとっても穏やかだった」


「そうだね。この世に悔いは残していないと思うよ」


「お前の母親の沙也の顔は苦しそうだった。生まれて間もないお前を残して逝く自分に無念を感じていたんだろう」


「父さん・・・」


「俺が日本に戻ったのは愛と子供達の為だ」


「・・・」


「フランスで多発しているテロに巻き込まれるかもしれないからな・・・」


「父さん・・・」

「俺はテロで死にたくないし、愛や子供達も死なせたくない。この国はテロがないし、安心して暮らせる。今こうして俺達が穏やかに花を生けながら時を過ごしていても、何処かでは争いが勃発している。人が殺し殺され、悲しむ人が増え、憎しみが増大し、争いも大きくなる。憎しみの連鎖だな」

自分のコトで頭が一杯で世界の情勢に目を向けたコトなどなかった。

俺が手を止めていると父さんは生け終えていた。


「もう生けたの?」


「ああ。このハナミズキは沙也の好きな花だったんだよ」


父さんはハナミズキを切なそうに見つめ、そっと花に触れた。


「冬也お前には寂しい思いをさせたと思う。俺は沙也の死を直視するコトが出来なかった。信じたくなかったんだ。お前の成長を親として見守ってやるコトが出来なかった」


「俺には爺ちゃんと婆ちゃんが居た。そして、花があった。寂しくはなかったよ」




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