片恋シンデレラ~愛のない結婚は蜜の味~
私は妊娠高血圧症候群から来る急性の子癇発作に陥り、意識を失った。

カラダは痙攣し、口から泡まで吹いたらしい。
そのまま、全身麻酔の緊急帝王切開で子供が救われ、私は丸3日間、昏睡状態だった。

医師にはこのままもう一度子癇発作を起こし、昏睡状態が続けば、命の保証が出来ないと冬也は宣告されたらしい。


「一時はどうなるかと思ったわよ」

5日間集中治療室に居たが、個室のベットに移動した。

低体重で生まれた私と冬也の赤ちゃんも暫くは院内のNICUの保育器の中。

お母さんと冬也が私に付き添う。


「冬也君なんて泣き崩れちゃって…私がしっかりしなさいと怒ったのよ」

「母の強さを実感しました」

「私の命を救ってくれたのは家元と赤ちゃんだった・・・」


「!?」


「私…三途の川渡りかけていたから・・・」


「お前…三途の川見たのか?」

「うん。でも、岸の向うに居る家元が『こっちに来るな』と言って私を渡らせなかった。後ろを振り返るとカンナの紅い花畑があって、小さな少女が私の手を引いてくれたの。『パパが悲しむから帰ろう』って」


「夏芽…それは本当の話か?」


「私と冬也の間に嘘はナシでしょ?」


「夏芽・・・」




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