片恋シンデレラ~愛のない結婚は蜜の味~
小陽さんは穏やかな笑みを浮かべて部屋を出て行った。


彼女は私にバスタオルとパジャマを用意してくれた。


私は一言礼を言おうとリビングに足を運ぶと小陽さんはキッチンのゴミ箱に副社長の為に準備した夕食をおかずを捨てていた。
小陽さんの瞳には涙が薄らと浮かんでいた。

「あの・・・」

「!?あ・・・どうしました?」

小陽さんは慌てて手の甲で涙を拭いて振り返った。


「そのおかず、毎晩用意しているんですか?」

「拓真さんが帰宅して、何も食べる物がなければ困るでしょ?だから、食べなくても毎晩用意しています。それが何か?」


「差し出がましいようですけど、副社長と腹を割ってお話はした方がいいんじゃないですか?」


「何を話しするんですか?」

「それは・・・」

「夜も遅いですし、拓真さんはもう寝ました。貴方も寝て下さい」

「バスタオルとパジャマ、ありがとうございました」

「貴方は拓真さんの大切なお客様、当然のコトをしただけです。お礼は要りませんよ」

小陽さんは綺麗でそれでいて聡明な感じの女性だった。副社長とは美男美女。でも、彼女の美しさの中には儚さもあった。


気丈には振る舞っているけど脆さが垣間見え、凄く痛々しい。

副社長は奥さんの危険信号に気づいていないのか?

初対面の私にだって見える。副社長にもきっと見えているはず。


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