〇年後、微笑っていられるなら〇〇と。

相手は俺らなんか眼中に無い。
仕事の話をする添え物だ。
持ち上げ、お酒を作り、下世話な話に相槌を打つ。

あれはいつだっただろう。飲み過ぎて連れて帰ってもらった先。
抱えられて、デカイ女が二人、乗ろうとしているエレベーターで一緒になった。

「あ」

「ど〜も〜」

「大変だな。大丈夫か?」

「あら、そっちだって、遅くまでお仕事ご苦労様ね」

「俺は、まあ、そうでもない」

「じゃあ、彼女の家から帰って来たってところかしら?」

「まあ、そんなところだ」

適当に言ったつもりが図星だったらしい。ふ〜ん。

「お泊り断られちゃったんだ」

「まだ、…そんな関係ではない」

「あら、大事にしてるぅ。好きなら、襲っちゃえばいいのに」

「それは…時と場合だろ。相手の気持ちも解らないのに…」

「まあね。気がなきゃ犯罪だもんね」


「おい…」

「何?」

「いい加減、ボタン押してくれ。帰れない」

「あらごめんなさい。真姉さん、押してるかと思った」

「あら、あたしはアンタを支えるので手一杯だったのぉ」

「ですって。ごめんなさい」


チン。

「部屋どこ?」

「聞いてどうする」

「ん〜。今度お邪魔したいから」

「フン。お前は?」

「あたし?あたしっていうか、真姉さんの部屋は〇〇〇よ」

「ちょっとやだ、いい男に教えないでよねぇ」

「大丈夫ですよ。訪問しませんから。…おい」

首に手を掛け、引き寄せられた。

「俺は真上だ。じゃあな」

ドアが閉まって上り始めた。


やるわね。女をドキドキさせるような事するじゃないの。まあ、俺は男だけど。
…はぁ、ドキドキした。

「アヤ、今の彼、いい男ね」

「ダメよ真姉さん。ストレートよ。きっと可愛らしい彼女も居るはずよ」

「あん。残念」
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