〇年後、微笑っていられるなら〇〇と。

・今、話さないと


はぁ、これからどうなるんだろう。
陽人と一緒に康介さんの部屋を出て、取り敢えず上に帰って来た。
康介さんに借りたベビードールを脱ぎ、元々着ていた洋服に着替えた。
陽人も言葉を発しない。
康介さんが居たからあんな話し方をしていたんだ。

部屋に入るまでは手を引かれ帰って来た。
幸い誰にも会わなかった。
そこは陽人に迷惑を掛けずに済んだ。
マンションの住人が、朝っぱらからコートの裾から素足の太股を出した女の手を引いて歩いてるなんて…。
陽人のような目立つ人は良からぬ噂をされかねない。

今はソファーに掛け脚を組み、手掛けに肘をついている。
…気まずい。このままここに居るのは正直しんどい。
康介さんが居たから…康介さんを介して陽人の気持ちを聞いた。
そして私は謝った。
表面上は仲直りしたように思う。

でも…なんだか釈然としない。
それは陽人の言った言葉にある。

ヤキモチからだった…だから酷い事を言った、…とは言え。
…ぶり返さない方がいいのだろうけど。
色々と言われた言葉は一言一言ズキズキした。
嬉しかった。ときめいた。初めてされた告白だったから。

独りが長くて…寂しくて…。このままずっと独りかも…。
私の事、知ってくれてる陽人なら…って。
甘えなかったとは言えない。甘えたんだ陽人に。

でもそれは…。
それと…。

「…陽人、聞いて」
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