神木の下で会いましょう
「別に泣いてなんかないよ」


けれど私の心は素直じゃないから、バレバレな嘘を吐いて誤魔化す。

頭はあくまで冷静で、服に丸い染み作った奴が何言ってんだって、自分で笑ってしまう。

自然と目線は下がって、地面をゆらゆらと歩く蟻を見つめる。

馬鹿で可愛くないな、私。

男の子は変わらず私を見つめたまま。


「じゃあなんで座ってるの?」


ああ、やっぱり神木の下で蹲るのは駄目だったかな。

罰当たり?

そりゃ男の子だって声掛けるか。


「歩き疲れたからだよ」


でも、ごめんね。

立ち上がるほどの体力が回復してないんだ。

だからもう少し、ほんの少しでいいから休ませて。

なんとなく空を見ようと顔を上げると、また男の子と視線が交わる。

あれ、なんか怒ってる?

怒りに染まった瞳と眉間に寄った皺。


「ねえ、なんで泥だらけなの?」


口調が明らかに怒ってる。

なんで怒ってるの。

初対面で友達すらいない私を怒るのは、おじいちゃんとおばあちゃんくらいなのに。

もういいじゃん、休ませてよ。

限界が近いのが瞼の重みで分かる。

気を抜いたら深い暗闇に落ちていきそうだ。

お願いだからどっかに行ってよ。

私に構わないで。
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