あなたの背中に恋してる~奥手な男子の攻略法~
今まで気にも留めてなかったけど、志賀くんの体…しっかりと筋肉がついて、男の人らしい。
私は、彼の首に腕を巻き付けて、離れないようにしっかりつかまってる。
体つきは、私より少し大きいくらいだと思ったのに、見た目以上に志賀君の背中はしっかりしてる。
「木原?首の周りは苦しいから、肩に顎を乗せるようにして」
「うん」
言われたとおりに、彼の肩に顎を乗せる。
体が密着してるけど、不思議と違和感を感じない。
すーっと馴染んでいく感じで心地よい。
もう、ずっとそうしてきたみたいに、馴染んでいくお互いの体温。
肌と肌の垣根が消えていく。
お互いの肌がぴったり重なり合ってるのに、前から1つのものだったみたいに離れがたい。
心地よい背中。志賀くんにも伝わってるかな。
いつも、口を開くときは、本当に傷つくのに、どうして今日は、こんなに優しいの?
今日だけ優しい訳じゃないんだ。
志賀君の言葉は、いつも同じだ。
今は…私がすごく弱ってるから、優しく感じるんだ。
私は、遠慮なく志賀くんに全身を預けられた。
力が抜けて、彼に頼りきりになる。
彼の背中に乗っけられて、揺られているうちに、小さな頃に戻った気がした。
差しのべられた手を遠慮なく受けて、当たり前のように、素直に受け止めれた時期に。
「志賀君?背中温かい。お父さんみたい」
「そうか?でも、お父さんはひどいだろ」
暗い夜の海の中に漂ってる。
頼りになるのは、志賀君の背中だけ。
ずっとこうしていたい、なんて思ってる。
お父さんって言うのはひどくないよ。
この世の中で一番信頼してる男の人だもん。
好きになりそう、この背中。
もう多分、そうなってる。
こんなに短い時間で、世の中がひっくり返るようなことあるのだろうか。
でも、もう彼なしでは、世界が違って見える。