あなたの背中に恋してる~奥手な男子の攻略法~

「おはよう」
次の日は、志賀くんより早く起きた。

志賀くんが作ってくれた通りに塩鮭を焼いて、朝ごはんを作った。キッチンのテーブルに出来た順番に並べて、彼がくるのを待っていた。


ドアが開く音がして、志賀くんが降りてきた。
「あの…志賀くん?朝ごはん…同じように、作ってみたの」


「まだ、居たの?朝ごはん?そっか…ありがとう」
よかった。穏やかな顔。
普段と変わりない。


私は、黙々と口を動かす彼の顔を見つめていた。
「あの、志賀くん。昨日はごめんなさい…」


「いいよ。そんなこと。友芽がどうしようと、友芽の自由だ。
ごちそうさま。もう行くね」
そう言うと、彼はすっと立ち上がった。


「うん…」
階段を上がりかけた志賀くんの後を追う。


彼は、振り返らずに言う。
「それから、この間も言ったけど、こういうのもうしなくていいから」

怒って口きいてくれないほうがよかった。
何やってるんだって、怒られたほうがよかった。




その日の夜、私は、志賀くんが帰って来るのを家で待っていた。

「志賀くん…」
玄関で彼が鍵を開ける音がした。


私は、我慢できずに大好きな彼に飛びついた。
「ちょっと…どうしたの?」

何を言われても、何度、突き放されても彼の腕の中が好き。

「謝りたくて…」


「謝る。俺に?何で木原が謝るの。別に何しようと、俺には関係ないでしょ」


いや。離れたくない。
「志賀くん…私、志賀くんのこと」


「ごめん…疲れてるから。明日にしてくれるかな」
彼は、私を容赦なく引き剥がすと、部屋に閉じこもってしまった。

その場にぺたんと座り込んで、いろいろ方法を考えたけど、浮かんでくることはみんな既に試したことで、志賀くんに拒否されたことだった。
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