キミにだけは遠慮しない
大きくなった存在
2、大きくなった存在

「今日のSHRはこれで終わりにします。部活行く奴は行け。用ない奴はさっさと帰れよー」
先生がこう言い終わると、生徒達は皆教室を出ていった。
私もいつも通り、帰ろうと鞄の中に教科書類を入れ始めた。
もちろん、さっきのやつは行かない。
行っても…時間の無駄だ。
私は帰る支度が整ったので、教室を出ようとした。
…すると。

「おい」
いきなり、誰かに左腕を掴まれた。
私は、ビュンという効果音がつく速さで振り返り、掴んだ相手を睨みつけた。
「大島さん、友達になろ?」
…………青木田だ。
青木田は、前までの爽やかな笑みとは違い、何かを含んだ笑みを向けながら言った。
「…んだよ。人に容易く触んじゃねーよ!」
私は青木田の手を思いっきり振り払って、睨みつけながら言った。
「えぇ〜。名前聞くまで返さないよぉ〜!」
相変わらず含み笑いをしながらジリジリと詰め寄る。
そして、教室のドアまで詰め寄られた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーードンッ。
左手をドアにドンッとつけた。
…ん?これは…世間でいう…壁ドン?
いや、壁ドンって言うよりドアドン?
よくわかんねぇー。
…ってそんなのどーでもよくて!
「んだよ。お前、調子乗ってんじゃねーぞ?…その手を離せ」
さっきより、より一層睨みつけて言った。
「わぁ怖い怖い。とりあえず、名前教えて?名前教えてくれたらこの手は離す」
青木田はニコッとして言った。含み笑いは変わらずに。

「…しょーがねぇなぁ」
私は深いため息をついて目線を逸らした。
「おっ、やっと教えてくれるんだね!俺の勝ちだ。さぁ、早くっ!」
青木田は、さっきより声がちょっと高くなった気がした。
そんなに嬉しいことなのかな…。
そして、いつの間にか左手をドアから離していた。
「お前、近い。もう少し離れろ」
私は再び青木田を見上げながら言った。
「ん、分かった」
青木田は少し離れた。
そうだ、この瞬間を待ち望んでいたんだ!
私はニヤリと笑うと、
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーガラガラガシャンッ。

「…………ってぇ。てか、おい!回し蹴りとか反則だろっ!!合気道習ってるって本当だったんだな…」
青木田は、左の脇腹を抑えながら言った。
「フッ、甘いなお前。あんなことで私が名前を言うと思ったか?出直してこいよ。つーか、人の体容易く触んじゃねーよ、このド変態やろーが!!」
私は青木田に怒鳴りつけて、制服を軽く整えて教室を出た。
マジで変態だわアイツ。趣味悪っ!

夕焼け空は、何故か憎たらしいほど綺麗に見えた。
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