可愛い弟の為に
しばらくして家に電話を入れた。

母さんに透と代わるように伝える。

目からポロポロと涙が溢れて止まらない。



「…透」

僕の声が震えている。

「よく聞いて」

「どうかしたの?」

透は不思議そうに聞く。

「…柏原拓海くんが先程、亡くなったんだ」

そう言った瞬間、自分をせき止めていたものが壊れた。

決壊だ。

後は言葉にならない。

医局で一人、号泣していた。



その日は午前の診察さえ終えれば帰る事が出来るので、どうにか診察をこなしたけど、自分でも何をどうしていたのか覚えていない。

後からカルテ等を見てきちんと仕事はしていた、ということがわかった。



なんとか家に帰り、透の部屋を開けた。

ポツンとベッドに腰を掛けている。



「…もう…どうして」

透は頭を抱えた。

「どうして僕の大切な人たちはみんな、いなくなるのかなあ…」

そう言って大声で泣き始めるから慌てて隣に座り、何度も背中を擦った。

あまりに泣くので最後は抱っこ、だ。

こんなに泣く透を今までに見たことがない。



きっと、ここで透の心は壊れたのだと思う。

もう、誰にも止められなかった。
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