可愛い弟の為に
28歳で市議会初当選ねえ…。

僕は大喜びの碧を遠目で見ていた。
若いだけで当選したようなものだ。
国立大卒、一流企業に勤めた後、議員を目指して当選。

ほとんど世間を見ていないボンボンに市の運営なんて出来るのかなあ。

ああ、退屈な宴だ。



「至兄さん」

碧が来た。

「おめでとう」

「ありがとうございます」

こういうやり取りは一応出来るんだ。
少しだけ、感心。

「それと俺、来年早々父親になる予定です」

一緒に連れてきている奥さんを指差した。
ゆったりとした服を着ている。

「おめでとう、良かったな」

お前が父親とは…世も末だ。
こんな自己中心的な奴が結婚して子供が出来て、市会議員。

ウーン。

「至兄さんは子供、まだなんですか?」

絶対に来ると思った、この質問。
僕達が結婚してこの時、7年目だった。
この宴の1カ月前に不妊が判明したのだった。

「僕達には子供が出来ないんだ」

隠す必要もないから言う。

「それって奥さんが原因?」

碧の発言に頬がピクッと動いた。

「だって、彼女、幼いし…」

見た目だけで言っているのか?
だとしたら相当な馬鹿。

「僕が原因だよ」

「またまた〜!」



真実を告げても信じないって…。

こんな奴が市会議員。

市民の目も腐っている。
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