東の国 妖合戦
関所
『稲生物怪録』の舞台でもある備前国(岡山県東南部)の比熊山に立ち寄る事もあるが、本来悪五郎は広島を根城としている妖怪だ。

備前国では魔王というより妖怪として名が知れている。

主に西日本を領土とし、足長手長、油すまし、磯女、一反木綿、一本だたら、姥ヶ火、長壁姫、ゲドウ、死人憑、砂かけ婆、針女、ヒダル神、山童などといった西の国の妖怪を率いる。

その悪五郎が、遠路遥々西の国から、こうして東の国の山ン本の領土を目指しているのは、至極単純明快。

山ン本とは仲が悪く、魔王の棟梁の座を賭けて古より争っている。

先の戦は数百年前だったか。

双方の妖怪に手酷い被害を受け、最後は山ン本との一騎打ちとなったものの、終ぞ決着はつかず。

互い根が尽き、不本意ながら痛み分けという事に相成った。

…あれから随分と経つ。

そろそろ傷も癒え、陣容も整った事だろう。

積年の恨み、晴らさでおくべきか。

流石は妖、怨念の強さは筋金入りだった。

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