48歳のお嬢様
私達が取ったお部屋はロイヤルスイートで、寝室が二つあって、
(お布団を出せば和室でも寝ることができて)
予定ではツインのお部屋を和樹が、主寝室のキングサイズのベッドで私が一人でのびのびと、ゆっくり眠るはずだったのだけれど……、

大きなベッドで二人でのびのびと?過ごしてしまった。

まあ、流れでは自然とこういう部屋割りになるのでしょうね。

未経験者の48歳としては、
妄想の世界で語られていたお伽噺が、一夜にして180度ひっくり返って、
『本当は○○い大人のお伽噺』に書き換えられてしまった様な経験をしたのだった。


完璧人間である和樹のエスコートはベッドでも完璧だった。
初めては痛いとか、歳を取ると痛いとか、誰が決めつけたのだろう?
私と一緒にいたはずの彼が、どこで鍛えたのか、そんな時間がどこにあったのかは、この際追求しないでおくことにした。

私は何もわからずに和樹の想いを体と心で受け入れるばかりだったけれど、
最後の最後に、おそるおそる聞いてみた。


「私は、何か返さなくてもいいのかしら?」


「もう、充分すぎるほど頂戴致しました」


「そう……。
じゃあ、汗をかいているから眠る前にお風呂に入りましょうね」


「お嬢様、それでは露天風呂にご一緒させて頂きたく存じます」


「……一緒に入るの?」


「はい、さようでございます、お嬢様。
今夜は晴れておりますゆえ、星がたくさん出ております。
月も綺麗でございますよ?」




それまで気だるげな色気ダダ漏れで、整った顔をゆるめていた和樹は、
ニコニコと嬉しそうないたずらっ子の青年に戻って準備を整えると、
私を誘って言った。


「お嬢様。
星よりも月よりも、私がずっと眺めていたいのは雪恵お嬢様だけでございます。さ、参りましょうね」


「……か、和樹?これは『お姫様だっこ』と言うものよね?恥ずかしいわ…」


「お言葉ですがお嬢様、こういうものは、雪恵お嬢様にこそお似合いになるものでございます」


……はい?
アラフィフのおばさんに姫だっこが似合うとは……どこのライトノベルにも載っていないと思うわよ?




……二人で露天風呂を堪能して、
体も心もフワフワしたまま、和樹に包まれてベットに入り、


「おやすみなさいませ、お嬢様。愛しています」


和樹は忘れずに約束のお休みなさいのキスをしてくれた。


「おやすみなさい、和樹。私も……あなたを愛しているわ」






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