48歳のお嬢様

「お嬢様。今夜は、お話がございます」


「改まって……何かしら?」


「はい、畏れながら申し上げます。

私が北條路に入ることを、正式に発表しなければならないと存じております。

当主、理事長、執事の関係を変更することなく、お嬢様が伴侶を迎えるという報告を、一族の皆様と学園関係者様には誤解の無きよう、
後々、心ない言葉でお嬢様のお心を煩わせることの無きよう、
明確にお知らせしなければなりません」


「そうね……その通りだわ。
血縁以外の学園関係者の方々は、驚くとしても面倒なことをおっしゃることは無いと思うけれど、
北條路の分家は煩わしいわよね。
書面で一報…っていうわけには、やっぱりいかないかしら……」


「やはりそう言うわけには参りません。
私は、小規模で構いませんので関係者に、ご結婚をお披露目するのがよろしいかと存じます」


「……え?……和樹?
お披露目って、もしかして、お式を上げて披露宴をする……あの?」


「はい、さようでございますね」


和樹はとんでもないことを言い出した…。
私は今年中に49歳、来年は50歳になるのよ?
自分は50半ば。あと何年かで還暦なのよ?
色々と元気過ぎて、とてもそうは見えないけれどね。
そんな熟年結婚の私達が、結婚式に披露宴ですって?


「それは、ちょっと…まあ、式は平服でどこかで上げてもいいかもしれないけれど、
披露できる姿ではないわよ?」


「小規模でも、結婚式でございますゆえ、花嫁衣装はお召しになってくださいませ。
お着物でもドレスでも、どちらにしてもお嬢様は、世界中の皆様にお披露目したくなるほどお綺麗でございましょうね……」


なぜかハートの目で遠くを見つめる和樹だった……。




直樹さんに、相談ね…。

しきたり事は、先代の執事を長年勤めた直樹さんに聞けば昔からの事もよくわかるし……。




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