48歳のお嬢様
洋装に着替えた私は、今になって少々気後れしていた。
やっぱりウェディングドレスというものは、それが似合う年齢というものがあると思うのだ。
無理して着ている様に見えるんじゃない?
心のなかで笑われてしまうんじゃない?


そんな私の所へ、着替えが終わった和樹が入って来て、
満面の笑みで嬉しそうに言ってくれた。


「お嬢様、やはり純白のウェディングドレスは大正解でございましたね。
私は女優かモデルを妻に娶った気分でございますよ。

お綺麗でございます、雪恵お嬢様」


「和樹が誉めてくれて嬉しいわ。
私、ちょっと心配になっていたのよ。
ウェディングドレスは無理だったかもって。
でも、和樹が喜んでくれているんだもの、他の人に笑われてもいいのよね」


「そんな心配はご無用にございます。
笑われることなどございません。
美しいお嬢様には無理などではございません。
ご自身をわかっていらっしゃらないのでございます。
お嬢様はお綺麗で可愛らしくていらっしゃいますよ?」


「そう……大丈夫なのかしらね…。

あ、そうだわ和樹、私は和樹の奥さんになったのよね?
だったらいつまでも私がお嬢様と呼ばれるのはおかしいわ。呼び捨てでよくってよ?」


「お嬢様……呼び捨てにすることは……執事である以上、無理でございます。
それはお嬢様のご希望でございますか?」


「そうね…。だって、恋人同士でも夫婦でも、呼び捨てにするじゃない?親密度の表れよね?
そうそう、西島さんとお話している時みたいにしてくれないかしら…」


「雪恵様……あの害虫と雪恵様は同様には出来ません。
でも、『お嬢様』はもう卒業致しましょう。
それが雪恵様のご希望でございましたら、呼び捨ても…努力させて頂きたく存じます。
しかしながら、執事として仕えている時は無理でございますのでご容赦願います」


「うふふ…。ありがとう。
我がままでごめんなさいね、旦那様」


「だっ……旦那様、でございますか…。
私は呼び捨てで構いませんが…」


「はい、かしこまりました、旦那様」


「……………」








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