尽くしたいと思うのは、




「森下ちゃんもうどん?
俺もうどん好きだよ、今度一緒に食べに行く?」

「行きません」

「んー、残念」



浅田さんはあんなにいい人なのに、加地さんはいつもこう。

軽くて、女の子が大好きで、みんなに優しい遊び人。たくさんの人と、その……体の関係があるとかないとか、色々な噂がある。



少し長めの、黒よりの茶髪は彼にぴったり。毛先を遊ばせているのに、なぜか爽やかに見えて営業らしい。笑顔は可愛いし、基本的にかっこいいし、と見た目は最高な人だ。

話力があって誰より仕事ができる。うちの大口のほとんどは彼が繋いだ縁で、いい仕事がしたかったらとりあえず加地さんと話をしてみろ、なんて言われてる。

すごい人だってわかってるんだけど、……わたしはどうにも加地さんが苦手なんだ。



だって、



「水瀬ちゃんはお弁当?
相変わらず、無駄な女子力発揮してるねぇ」



わたしにだけ、毒舌で優しくなんてしてくれないから。



「そこそこ可愛くて、料理が上手と家庭的。
なのに重いとか、水瀬ちゃんってもったいないよね。また彼氏に尽くしてるの?」



お弁当を覗きこみながらの、加地さんの何気ないいくつもの言葉がわたしの心を突き刺す。

ううっと言葉につまり、不自然に目をそらす。その様子に彼はあれ? と首を傾げた。



「加地さん、その話題は今はだめです。
この子またふられたんで」

「あらら」

「真由ー!」



どうして言っちゃうの……!

可能な限り加地さんにはばれたくなかったのに、誰に知られるより彼だけはごめんだと思って隠そうとしていたのに。これじゃ意味がない。



「水瀬ちゃんってさ、本当に『だめ男生産機』だね」

「っ、」



確かに、否定できない。

わたしがだめな男に引っかかってるのか、それとも相手をだめな男にしてるのかわからないけど。それでもいい変化を与えているとは言えない。



だけど、ねぇ、気づいたんですが。加地さんにそんなひどいこと言われる筋合いはないのでは……!

容赦なさすぎますよね!






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