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何だかこの場所に居たくなくて、私は物音をたてないように自分の部屋に戻った。宝生さんはまだ電話中だから、たぶん私が部屋に戻った事も気付かない。


いや、私が居ようが居まいが宝生さんには関係ないか。


部屋に戻ると真っ先にベッドにごろりと横になった。
何だかわからないけど、物凄く悲しかった。
そんな情緒不安定な私は涙が溢れないように必死に目を閉じた。


暫くしてふと目を開ける。ごろりと体勢を代えた。するとある紙袋が目に飛び込んできた。それは先日、楢崎くんから受け取った物。『忘れ物』なんて彼は比喩していたが。


机の上にあるまだ未開封のそれをそっと引き寄せる。
そして、昨日の凌介さんの台詞が気になっていた。


『反対されたから?だから諦めちゃうの?』


その通りだ。
彼の両親に交際、それ以上も反対された。


『うちの息子は、いずれは夫の跡を継いでもらうの。あなたみたいな何処の馬の骨か判らない娘さんとは、付き合えません!!』


私はそれまで、知らなかった。


彼が『楢崎商事』の息子で、次期跡取りで、そして決まった許婚がいるなんて。

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