君が好きになるまで、好きでいていいですか?
Prologue~告白~




「沢村万由さん、俺と付き合って下さい。」




今、目の前にいる………妙に背の高く顔も整っていて、スーツが似合い過ぎる男性の、発した言葉を解読中だ


嗚呼……この人なんかよく見かけるかも

確か時々女子社員の御姉様方が、「○○さん今日もカッコいい~」って言ってたような


あれ? 名前なんだっけ…………?


「あっ…………ご免なさいっ!」

万由は深々と頭を下げた


「えっ、あぁぁ…………即答?」

息を吐くようにそう言って、額を手で覆うイケメンの男性

「沢村さん、もしかして俺の名前も知らないよね」


「へっ………?」


そう言って、胸のポケットから名刺を出してきた

それを受け取って見ると、裏面にプライベートの携番からメールアドレス、年齢や最終学歴、趣味特技、住所に至るまでギッシリと書かれてあった


「……………」


「出来れば返事は後日って事で、これ渡したかったんだけど」


えぇ………いや、それでも断りますけど


ここは会社の屋上

朝の一番込み合う電車を避けるため、始業40分前には会社に着いて、天気のいい日は8階上の屋上に上がる

そこはビル街の中、辺りから比べれば低い位置にあるうちの会社からの眺めが決してイイ訳ではない

側面には転落防止のため、高い位置にフェンスまで張り巡らされてある

でも季節柄、霞掛かった空気とビルの隙間から見える朝陽が綺麗だったりする


一応ベンチと、飛ばないように固定してある灰皿が設置してあるため、鍵もかけられていない


天気のいい今日も、いつものようにやって来たら…………


彼がいた


「でも、私…………」

名刺を持ったまま見上げると、イケメンが顔を半分隠しながら、「待って」と、もう片方の手のひらを向けた


「出直したいから、取り敢えず今日はこれで」

そう言って、さっき貰った名刺だけ残して行ってしまった。


あれ? 私……………今、断ったよねぇ


取り敢えずってなに? 出直すの?





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