君が好きになるまで、好きでいていいですか?



日曜日の朝、もう一度病院に寄ってから帰る事にした

「おばさん、すみません何から何まで有り難うごさいました」

慧斗が万由の母に深々と頭を下げる
慧斗の母親の方は月曜日には退院できるらしい

「いいのよぉ、私は暇なんだから。慧斗君の顔みられてお母さんも元気になったし」

「出来るだけ帰ってくるようにします」

そう言ってもう一度頭を下げた


「後はすみません、これからもよろしくお願いします。」

「慧斗君こそ、これからも万由をお願いしますね」


ぽんぽんと交わされる帰るまでの挨拶
お母さんたちって、じゃあって言ってからもなかなか帰してくれないんだよねぇ…………

ん?

なんで私がお願いされてる?


「なんだか若夫婦が帰省するみたいねぇ。寂しいわぁ………ってそんな事言ったら万由ちゃんに悪いかしら」

「あらぁ、現実だったら大歓迎よぉ。万由なんか昔から慧ちゃん慧ちゃんなんだから」

「ちょっ、お母さんっ!!」

何言ってるのっ?!


二人の母の、これまた違う方向に膨らみそうな会話を止めに入った

この手の話、今はシャレにならないから


「もう、帰ろう慧ちゃんっ」

慧斗の袖を掴み、引っ張って病院を出た




車に乗り込みながら肩を揺らして慧斗が笑う

「別にいつもの事じゃないか」

そう言ってエンジンをかけ車を発車させた

「…………」

別れてから3ヶ月間、電話もメールもしていなかった。
本当にあれから初めて会った慧斗が、全く違和感なく変わらないままの様子でいられるのが不思議だった


別れた後どうしていたかなんて話はしていない。

実際、あの後も和音さんとは仲良くしているんだろうし、返って私と一緒にいる事を後ろめたくて感じないのだろうか

母親たちの前だけは、昔みたいな幼馴染みに戻ったふりをしているだけ

だからこのまま、帰りはマンションまで送って貰わなくてもいいし、電車で帰ろう


「慧ちゃんあの、もう私そこの駅まででいいから………」


「あ、万由っ!中学校寄って行こう」


「えっ?」


万由の申し出を聞いてないのか、車をその懐かしい母校に方向を向けて職員用の駐車場のひとつに車を停めた

「ええっ?! いいの?!」

< 225 / 333 >

この作品をシェア

pagetop