それでも君を愛せて良かった




「じゃあ、行って来る。
夕食は、多分、友達の家で食べて来るからいらないからな。」

「わかったよ。行ってらっしゃい。」

兄さんは、昼食後、友達の家に出掛けて行った。
夕食はいらないということだから、帰りも遅くなるのかもしれない。
どうせなら酔いつぶれて帰って来て、そのまま眠り込んでくれれば良いのだけど…



「アベル…おかしなことを聞くようだが…」

「何、父さん?」

「……おまえは私に隠し事はあるか?」

「隠し事……?
そ、そんなものはないよ。」

僕がそう答えると、父さんはじっと僕の顔をみつめてた。



「アベル…私は、話しにくい父親か?
信頼出来ないか?」

「そ、そんなこと、ないよ。
父さん、突然、どうかしたの?
なにかあったの?」

「いや……なんでもない。」



父さんはそう言ったっきり、また黙々と仕事に取りかかった。
父さんは、何を言おうとしたんだろう?
まさか、ファビエンヌのことがバレた?
いや、そんなことはない。
僕はいつも父さんが眠ったのを確認してから出て行ってるし、もしも、父さんがファビエンヌのことを知ったら、黙ってる筈はない。
他に思い当たることもないけど…
兄さんが、なにか言ったんだろうか?
言ったとしたら、一体何を…?

僕はなんともいえない不安な気持ちを感じながらも、それを隠して、仕事に取りかかった。




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