それでも君を愛せて良かった
「アベル、馬鹿なことを言うな!
これはただの人形だ!
なのに、おまえはこんなものにジュリエッタのドレスを着せ、そればかりかこんな大切なものまで…!」

父さんはそう言って、ファビエンヌの首から母さんのロザリオを引き千切った。



「父さん!やめて!酷いことしないで!
それはファビエンヌが一人でいても寂しくないように、かけてあげたものなんだ。」

僕は、ファビエンヌの首に傷がついていないかと心配になり駆け寄った。



「おまえはまだそんなことを…!
目を覚ませ、アベル!
これはただの人形だ!
人形に心などない!
人間になることなんてないんだ!」

父さんの言葉に、僕は心の底から憎しみを感じた。
今まで誰にも感じたことのない激しい憎しみを…
何も知らないくせに…ファビエンヌのことを何も知らないくせに父さんはファビエンヌをただの人形だと言ったんだから。



「そうじゃない!
ファビエンヌは…ファビエンヌはただの人形なんかじゃないんだ!
彼女は僕のことを愛してくれてる!
僕だって、彼女のことを真剣に愛してる!
それに…僕達は…心だけじゃなく、身体も繋がってる。
……身も心も繋がってるんだ!」

「アベル……なんと…
おまえは、なんとおぞましいことを……!」

そう言うと、父さんは怒りに震えながら僕の顔を拳で殴り、小部屋を出て行った。
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