それでも君を愛せて良かった
***



「と、父さん!
一体、どうしたってんだ!
何があったんだ!」

キースは、腰のあたりをさすりながらゆっくりと立ち上がった。



「大変なことになる所だった。
あいつは……アベルは、この人形を恋人だと言った…」

そう言って、キースはファビエンヌの残骸に目を落とす。



「人形…?
じゃ…じゃあ、あいつが夜中にこっそり密会していた相手は人形だったって言うのか?」

「その通りだ…
あいつは病んでる…
あいつは…」

「ちょ、ちょっと待ってくれ!
俺…確かに聞いたんだぜ。
女のあえぎ声を…
女がアベルの名を呼んでるのをはっきり聞いたぜ!」

「それはおまえの聞き違いだ。
アベルは人形を相手に……汚らわしい!
……いや……あいつは病気なんだ。
……あいつのしでかした間違いは、すべて病気のせいなんだ……」

「でも、俺、確かに……」

「さぁ、馬鹿なことを言ってないでともかくここを出るぞ。」

キースはランプを持ち、もう片方の手でケインの腕を掴んで扉の方へ促した。



「あ…あぁ…アベルを探さなきゃな!」

「放っておけ。
しばらくしたら、あいつも頭が冷えるだろう。
こういう時は却って一人にしておいた方が良いんだ。」

二人が小部屋を出ると、キースは小さな扉をばたんと閉じた。
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