空へ
翼は、私の左手をもった。
そして、そっと薬指になくしたはずの指輪をはめた。
「そんな顔すんなって」
私の顔を見て両頬を歪ました。
「女の人・・・誰?」
違う。
言いたいのは、こんなことじゃない。
「・・・女?・・・静香さん?あの人は・・・」
言わなくてもわかるよ。
会社の上司だよね?
「どこに行くの?」
違う。
「空」
「私は、どうすればいいの?」
違う。
「生きる」
翼が光り始めた。
行かないで・・・。
「霞・・・好きだよ」
「私も・・・好き」
これだ。
そのまま唇を重ねた。
「またね」
そう言った翼の笑顔は、回りの光りよりも輝いていた。
私もできるだけ、最高の笑顔で翼にまたねを言った。
―翼、約束だよ?
“またね”って“また会おうね”ってことだよね?
私が、しわくちゃのお婆さんになっても会ってよね?
翼・・・約束だよ。
破ったら許さないんだから。
「翼ッ!大好きだよ!!」
空に向け叫んだ。
すると一瞬だけ、空が笑ったような気がした。