空へ

翼は、私の左手をもった。

そして、そっと薬指になくしたはずの指輪をはめた。

「そんな顔すんなって」

私の顔を見て両頬を歪ました。

「女の人・・・誰?」

違う。

言いたいのは、こんなことじゃない。

「・・・女?・・・静香さん?あの人は・・・」

言わなくてもわかるよ。

会社の上司だよね?

「どこに行くの?」

違う。

「空」

「私は、どうすればいいの?」

違う。

「生きる」

翼が光り始めた。

行かないで・・・。

「霞・・・好きだよ」

「私も・・・好き」

これだ。

そのまま唇を重ねた。

「またね」

そう言った翼の笑顔は、回りの光りよりも輝いていた。

私もできるだけ、最高の笑顔で翼にまたねを言った。


―翼、約束だよ?

“またね”って“また会おうね”ってことだよね?

私が、しわくちゃのお婆さんになっても会ってよね?

翼・・・約束だよ。

破ったら許さないんだから。


「翼ッ!大好きだよ!!」

空に向け叫んだ。

すると一瞬だけ、空が笑ったような気がした。

< 22 / 28 >

この作品をシェア

pagetop