上司がキス魔で困ります

「かっ、課長、どうしてそんな悪い顔して壁ドンするんですか……?」


 私の問いに、息が上がったままの良悟さんは少し考えこんだ様子で眉を寄せた後、
「つい、本能で」
と、笑う。


「本能って……ふふっ」
「めぐ、笑った。やっぱりかわいいな。その顔が、好きだ」


 そして課長は、涙でえらい顔になっている私にキスをして、ささやいた。


「めぐ、好きだ。今、この状況でこんなことを言うのはおかしいってわかってるが、言わせてくれ」
「……わかってます」


 ああ、フィンランドのことだ。

 私はうなずいた。


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