上司がキス魔で困ります

「数えたらキリがないが、とにかく春川くんのガードは固かった。鉄壁の守りだった。あまりにも相手にされないから、大きな仕事を終えたあとなら誘いやすかろうと食事に誘うと、元気いっぱいありがとうございますと笑って、同期や後輩を連れてくるし……」
「……そういえば」


 そういえば、わりとそんなことがあったような、なかったような……。

 背中に汗が流れるのがわかる。


「この三年近く、俺の誘いはことごとくかわされた」
「……鈍感なのは誰だったって話ですよね……あはは……」


 まさか天然だと思っていた良悟さんを上回る鈍感ヤローが私だったとは。


「だから、嫌われているんだろうと思った。諦めて、フィンランド行きを受けたのは去年の冬だ」


 そして良悟さんはブランコを止め、私を見つめる。



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