上司がキス魔で困ります

「春川くん、こっちを向きなさい」


 課長の手がうつむく私の頰にふれ、ゆっくりと自分の方に向ける。


 ギギギギ……。


 そんな音がしそうなレベルでギクシャクしつつ課長を見上げると、課長は私の眼鏡のつるを両手で持ち、そっと外してしまった。


「……っ、あの、」


 息がつまる。

 眼鏡をかけている人ならわかってくれると思うのだけれど、眼鏡はもはや体の一部であって、普段は人前で外すものではないのだ。


「なんで外しちゃうんでしょう……」


 なんとなく彼の答えは予想していたのだが、もしかしたら違うかもしれない。しどろもどろに問いかけた。


「それはやっぱり、キスがしにくいからだな」



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