上司がキス魔で困ります

 抱えていたゴミ箱を所定の位置に戻し、課長の斜め前の自分の席についてパソコンを立ち上げる。


「ちなみに今日考えた案なんですけど、カフェとコラボして移動式カフェなんてどうかなーなんて思ったんですよ。今日は渋谷、明日は目黒、みたいに、カフェがうちの家具使って移動していくんです。これから春先になって天気もいいし、外でお茶飲んだら楽しそうじゃないですか……ってわああああっ!」


 驚いた。
 大げさでなく、心臓が止まるかと思った。

 なぜなら課長の超美しいお顔が、ディスプレイと私の顔の間に、ぬっと、差し込まれたからだ。


「なっ、な、なんですか、めちゃくちゃびっくりしたんですけど!」


 バクンバクンと跳ね回る心臓のあたりを手のひらで抑える。


「春川くんが俺の提案を検討しないから」
「私のせい!?」





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