上司がキス魔で困ります

 ちょっぴりずれ落ちた眼鏡を押し上げ、隣の椅子に勝手に座り、私の机の上に頬杖をつく、飼い主の仕事を邪魔する、自由な猫みたいな音羽課長を見つめた。


「提案って、その彼女がどうのってやつですか?」
「ああ」
「……いやいやいや」


 脳みそをフル回転させて、何度答えを導き出してもあり得ない。


「課長と私では釣り合わないです」


 音羽課長は、仕事ができるだけでなく、ああやって週一で誰かに告白されたりお食事の誘いを受けたりするような特別な男前だ。

 確か帰国子女で、いい大学出てて、身長が百八十以上あって、いつもおしゃれで、涼しげで切れ長な眼差しをしていて、サラサラで柔らかそうな黒髪で、クールで知的な雰囲気を漂わしているのである。

 いわゆる最近はやりの塩系男子というやつで、シュッとしてシャッとしているのである。


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