役立たず姫の一生〜永遠の誓いを貴女に〜
1章 瑠璃に揺れる
月の光を閉じ込めたような白銀の髪、
湖水を思わせる深い瑠璃の瞳、
咲き誇る薔薇すらもかすんでしまう甘やかな微笑み。

女神アイラスも嫉妬する輝くばかりの美貌。


これらの賛辞は、このキトニア王国の王妃に向けられたものでもなければ、名門貴族である五大公爵家の令嬢方に向けたものでもない。


アゼル・ティーザ。


ティーザ侯爵家の三男坊である俺に贈られた言葉達だ。

俺は幼い頃から、それはそれは愛らしく美しい少年だった。
ティーザ領の人々は女神アイラスの生まれ変わりじゃないかと噂したし、16歳になった今でも俺の美貌はティーザ家の至宝と謳われている。


が、俺の取り柄は見目麗しい容姿だけ。

勉強は嫌いだし、馬や剣の訓練も面倒だから軍人になるつもりもない。

俺には優秀な兄が二人もいるし、そもそもティーザ家はかつては名門に名を連ねていたけど今は落ちぶれかけた中堅貴族。

必死になって守るような家名でもないだろう。


城を抜け出し城下街をふらふらしたり、
下働きの女達と無駄話をしたり、
一日中寝台から起き上がらない日もあったりする。

俺は、自由気ままにぐうたら生活を謳歌していた。


退屈しないのかって?



そりゃあ、もちろん退屈だよ。


けれど、他にやりたい事もやるべき事も何も無いしね。
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