海 に 溶 け る 。
海に溶ける。
砂浜にあがって、ふたりで肩を並べながら海を見つめる。
波の音が優しく響く。
潮の匂いが肌をまとう。
「あたしね、先生がすきだったの」
「学校の……?」
「そう。結婚もして子供もいたんだけれど、すきですきでたまらなかった。だから早く忘れたくてスッキリしたいからダメ元で告ったんだ」
あのときの心臓の高鳴りは今でもしっかり覚えている。
夕焼けが放課後の誰もいない教室を照らしていたんだ。
そこにいつもと同じ優しく笑う先生がいて
手汗を握るあたしがいた。
「忘れようと思っているのに、先生OKしちゃうんだもん。びっくりしちゃった。その後のこと何て何も考えてなかったけれど……嬉しかった」
秘密のアイコンタクトも
秘密のデートも
秘密のキスも
全部、楽しかった。
幸せだった。