甘い誘惑*短編*
「…アホじゃないです」
「今そこに食いついて欲しい訳じゃないから」
呆れたとでも言いたげに今度は笑う
ん、と広げられた腕の中に私はおずおずと飛び込んだ。
二人分の体重を支えるベッドのスプリングが軋む音がした。
「先輩、なにも言ってくれないからっ…」
「…うん」
「私、何とも思われてないんだって」
「うん」
「バレンタインだって、一生懸命毎年作ってて…」
「うん」
「でも、やっぱり先輩は平然として…!」
「ごめんな」
泣く私を先輩は抱き締めながら困ったように謝る。
困らせたくはないけれど、長年の恨みだ