恋愛船〜jast two〜
英麻にきくまで、
秋があんなに一途だったのを知らなかった。
中学のとき、彼女がいたのは知っていたけど、
高校になって秋からそんなはなしは
いっさいきいたことがなかった。
「花恋……」
花恋の笑った顔が思い浮かぶ。
甘いものを食べているときの
しあわせそうな花恋を。
すねたときに
口をむぅっと、とがらす花恋が。
ぜんぶ、ぜんぶ。
俺だけのだった花恋は、
いまはもう、秋のもの。
花恋っ……、
そう、心のなかでつぶやくと同時に、
俺の瞳から、
ひとすじの涙がながれおちた───……。
──────…………