パンプスとスニーカー
 「いや、たぶん…」




 口ごもったまま黙ってしまう。


 が、すぐに気を取り直したようだ。




 「まあ、そのことはとりあえず、保留ってことにしてくれない?」

 「でも」

 「ずっととは言わないけどさ、しばらく…そうだな。俺の見合いの話が立ち消えになるまで…それでいいから」

 「…………」




 見合い。


 そういえば、そもそもの話の発端はそれだった。


 断れないから、…そして見合いを受けてしまえばそうそうご破算にはできないからと引き受けた話で、自分の気持ちの問題一つで覆してしまうわけにはいかない。


 …おばあさまや一佳さんたちならわかってくれそうなのにな。


 本当にそう思う。


 けれど、その二人をひまりなどよりずっとよくわかっている武尊が説得できないと言い切るのだ。


 よほどの事情があるのだろう。




 「わかった。ごめんね、いまさらちゃんと了解して引き受けたことだったのに」




 ひまりの言葉に、武尊がクスリと笑ってくれる。




 「いいよ。それだけ、ひまが生真面目で、俺の家族に好意を持ってくれたってことだろ?」





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