パンプスとスニーカー
 嫌われたくなくって、臆病になる自分をらしくないと思う。


 …それでもそんな自分が新鮮で…嫌いじゃないとかどんだけなんだよ。




 「じゃ、俺、部屋に戻るか…」

 「待って!」




 踵を返しかけた武尊の腕を、今度はひまりが両手で掴んで引き止める。




 「待って」

 「……ひま?」




 俯いてしまっていたひまりが、ゴクリと唾を飲み込んだのが不思議に目について、目を反らせられない。


 顔を上げた彼女の顔は、まるで茹でた蛸のように真っ赤になっていた。




 「い、いやじゃない」

 「…………」 

 「そ、そのっ、急だったから驚いちゃっただけで…あの、あ、あたし、あたしねっ。武尊のこと、もっと、もっともっと…知りたいと思ってる。だって、武尊のことが好き…だから」




 泣き笑いみたいに引き攣って…妙に気負った変な顔をしたひまりは、それでも凄く可愛かった。




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