探偵の彼に追跡されて…
✽ ✽ ✽ ✽ ✽

2時間前…


出勤していつもの様に掃除をしていると所長が現れ

「美野里ちゃん。おはよう。はいこれプレゼント! これ着て僕と今日1日デートしようね?」

所長はセレブに人気の某有名ブランドのショップバックを私に押し付けて満面の笑顔を見せた。

なにその笑顔? そのご機嫌さは何処からくるのだろう?

「はぁ? なぜ私が所長とデートしないといけないんですか? 私は誰かが無駄遣いばかりするので今月も赤字なんではないかと頭を抱えながら伝票の整理をしないといけないんです。それにこのブランドお高いですよね? 誰が払うんですか? どうせショップのお姉さんに上手に乗せられて買わされたんでしょ? 経費では落とせませんよ!? 所長の自前じゃないなら返品して来てください!!」

まあ自前でもこんな高いブランド物を貰う様な仲では無いのだからどちらにしても受け取れない。

私はプレゼントではなく押し付けられたショップバックを所長の胸へ押し返す。

「えー美野里ちゃ経費で落とせない? ダメかな?」

両手を祈るように胸の前で握り、眉を下げ瞳をウルウルさせ捨てられた子犬のように私を見つめる彼はこの【桃太郎探偵社】の所長で百瀬沙汰朗(モモセサタロウ)33歳。

学生時代モデルをやっていたと言うだけあって誰もが認めるイケメン。この甘いマスクは微笑むだけで罪だ!

細身で身長は推定185cm、国立大学卒業、多分既婚者である。多分というのは左手薬指に指輪をしている事やデートのお誘いに訪れるお水のお姉様方に

『子供をお風呂に入れないといけないんだ。うちの奥さん怖いからごめんね?』

と、断っているから多分既婚者だろう。

ただ事務所の上、3階が所長の自宅になっているが奥さんや子供に会った事は一度もない。

他に別宅があるのかもしれないけど?

だから多分なのだ。



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