夜まで待てない



✱✱✱


「どうしたらいいか分かんないんですよ!」


鬼プヨに連れて来られたのは居酒屋で、私はヤケになりお酒をガブガブ飲んで酔っ払っていた。


「何だ、てっきり俺は会社の事で悩んで泣いてるかと思えば恋の悩みだったのか?
若いっていいもんだな!ガハハハ」


「笑いごとじゃないんですよ!部長に何が分かるんですか?結婚してないくせに!会社ではガミガミ怒って何度泣いたかわかんないですよ!そんなだから結婚できないんです!」


「ほぉー橋本!酔っていたら言いたい放題だな…」


や、ヤバイ!私ったら…


「す、すみません!お許し下さい鬼部長様!」


「鬼部長?まぁいい!
俺だって結婚したくなくて独身ではない!
恋愛だってしてたよお前くらいの年齢の時は…結婚を考えた彼女がいたんだけど彼女は交通事故で亡くなった。
俺は彼女を愛していたから他の誰とも結婚はせずに一人で居るんだ。
お前の幼馴染かなんかしらんが生きてるだけいいじゃないか!それに泣くって事は好きなんだろそいつの事が!
後悔しないように好きって伝えろ!
後…俺が仕事に対して厳しいのは、橋本もこの前にミスした時に思っただろうが、確認をちゃんとしなきゃ周りに迷惑がかかることがあるだろ?だからオレはお前が言ったように"鬼"になるんだ!」


「部長…」


私はそれ以上、言葉が出なかった。
まさか鬼プヨにそんな過去があったなんて。
最後には仕事の事までも…


「お前の恋愛に興味はないが、諦めるならぶつかって諦めろ!さぁもう飲み過ぎたしタクシー呼ぶから帰りなさい!」


そう言って居酒屋を出るとタクシーを呼んでくれて、タクシー代まで鬼プヨはくれた。


だがやっぱり鬼だと感じたのは「このお礼は仕事で返せよ」と言われた。


鬼プヨに失態をしてしまったのに怒らずに話を聞いてくれて、鬼プヨを見る目が変わった。


私はお礼を言ってタクシーでマンションまで帰った。





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