さよなら

自分が死に至る病であるという事実とともに今まで生きてきた。


突然の余命宣告だった。
しばらく現実味がなかった。


死については、考えた事がなかったわけではない 。

正直な所、病気になる前にも、死にたいと思ったことも何度かある。

でも、臆病な私にそんなことできるはずもなかった。

一歩踏み出せばこの世とお別れ、そういう場所に来てわかったんだ。

いつも、最後の一歩が……
後一歩なのに、
その、たった一歩が踏み出せなかった。






そして、医師に告げられた私が死ぬ日。

知っても意外と怖いことはなかった。


それとも、もう少し先のことだから、実感がわかないだけだったのかもしれない 。


周りには黙っておこうか、それとも平気な顔して言いふらそうか。

そんなことだけ考えてみた。



今思えば何かの間違いではないかと、期待していたのかもしれない。

そんなはずないのに。




残りの時間の使い方、もう少しよく考えてみるべきだったかな。

少しだけ後悔する……。


もっと人に優しくなったかもしれない、逆にワガママになったかもしれない。


自分が一番やりたいことに専念したかもしれない、今までどおりの日々を送ったかもしれない。


大好きな人に気持ちを伝えられたかもしれない。

それとも相手を想えば、何も伝えない方が良かったかな。


もう少し生きていれば、死にたくないと泣き叫んだかもしれない。

誰かに楽にしてほしいと頼んだかもしれない。


周りの人にたくさん優しくされて、ありがとうってたくさん伝えたかもしれない。







だけど、私は何もしなかった。
もう少し続くはずだったと思う、私の人生。

ここで投げ出して、もう終わりにすることを選んだ。

んーん、投げたすんじゃないかな。

この世から羽ばたくことを選んだ……。
こんなフレーズのほうが素敵に聞こえるでしょ?


今考えたことも、すべて意味をなくす。

なんの問題もない。何も心配しなくていい。



空は青く澄み渡っている。
なんていい日だろう 。


この空を飛びたい……

今からこの空を飛ぶんだ……




地のない場所に足を一歩踏み出した。

初めての感覚。



そして私は今、無重力の中にいる……













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