ティアラ
心の中で、母親に「ごめんね」と謝った。

深町は黙ったまま、ジッとあたしを見つめてくる。

沈黙になっていることと、嘘をついたという後ろめたさから、自然とまばたきが多くなっているのかも……。

気まずい空気に耐えることだけで精一杯のあたしは、まっすぐ深町の目を見れない。

「もう遅い時間だし、あんまり遠くには行けない。この前と同じファミレスでいいか?」

自宅があるほうに向いていた彼は、ハンドルを曲げて、国道のある道に向かっていく。

「別に、どこでも……」

置いていかれないよう、あたしは小走りで彼の後をついていった。
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