ティアラ
弥生ちゃんから、どこまで聞いたのだろう。

嘘をついてまでそれを理由にし、ずっと嫌がらせを続けていたあたしは、冷や汗をかきながら、彼の後ろ姿を眺める。

何か言おうとしているのだけれど、口をパクパク開けるだけで声が出てこない。

ううん、何て言えばいいのか迷っている。

目の前から去ろうとしている彼は、少し離れた場所でピタリと立ち止まった。

「もう俺の周りをウロチョロしないでくれる? ……迷惑なんだよ」

日曜日の彼は、いつもコンタクトをしている。

眼鏡をかけていないぶん、どんな瞳をしているのか、はっきり見ることができた。

氷の矢のような、温かみのない視線。
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