ティアラ
同じようにこの場を離れるあたしは、あきおちゃんとすれ違う瞬間、チラリと彼女の顔を見た。

「……」
何、この子。

見てはいけないものを見てしまった気がする。

あきおちゃんは口をキュッと閉じて、何度もまばたきをしていた。

色黒な肌でもはっきりわかるほど、彼女の顔は真っ赤で……。
その色は耳まで届いている。

……この反応はもしかして。

「嘘……でしょ?」

あたしは、外で待っている篤紀に目を向けた。

季節はもう真冬。
こんな時期に赤面するなんて、理由はひとつしかないと思う。
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