第二部 母と妻と女の狭間で・・・ 留学時代編
「そりゃ確かに、『帰るときは黙って行っ
たる』とは言ってたけど、まさかほんとに
黙って行くとは思わなかったもん」

「ヤマさんも寧子のことは心配だったみた
いで、手紙を預かってきたよ」 

 寧子は手紙を受け取ると、すぐに読まな
いで、自分の机の引き出しにしまった。

「読まないの?」

「うん、今読んだら、また泣いちゃうから。
あとで一人で読むよ」

 寧子は一人で頑張ってるけど、ほんとは
寂しがり屋で、それをヤマさんもわかって
て、だからヤマさんは寧子を気にかけてい
たのが、ほんとの兄弟みたいで、少し羨ま
しかった。
 それだけに、ヤマさんが黙って帰っちゃ
ったのが、ショックだったんだよね。
 でも、ヤマさんもちゃんとわかってて、
寧子にだけは手紙を残したなんて、琴乃さん
が好きになる男性なんだなって実感。
 ほんとはヤマさんて素敵な人だったんだな
って思った。
*
 寧子と2人でのんびりとコーヒーを飲み
ながら、いままでのヤマさんとの思い出を
話してたら、寧子も少しづつ元気が出てき
て、午後からMoscowに買い物に行くこと
にした。

 ミチに電話したら、午後は空いてるって
ゆーんで、決まり。

 一回家に帰って、1時に寧子んちへ集合。
アパートの前で、ヤマさんから受け継いだ
部屋の鍵でアパートに入ると、ここが自分
の家なんだって実感。
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