シオン



「好きな人ができた」


そう言った彼の声は震えていた。



暗闇で顔はあまり見えなかった。

それよりも涙で彼がぼやけて見えた。


少し見えた彼の顔は...



『好きな人ができた』


これはきっと嘘だ。


嘘をつくならそんな悲しい顔しないでよ。

見抜いてしまうから。



だけど、

「嘘だ」「別れたくない」

この言葉は言えなかった。


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