気がつけば、嫌なあいつが私の初恋でした

「ちょっと聞いてよ!すごいムカつくの!」


着替えが済むまで待ちきれなくて、リビングにいるはずのお兄ちゃんに、勢いよく話し始める。


「うちの担任、酷すぎるんだよ!」


脱いだブレザーを雑にハンガーにかけ、ブラウスのリボンを引っ張った。

和室とつながるリビングの様子は、襖がしまっているので見えないけれど、大きな声を出せば聞こえるはず。


「全然人の話聞かないで、携帯没収するとか信じらんない!民主主義だよ、日本は!そもそも、あのすかした顔もふわっふわな髪型も、どこにいるのかすぐわかる声も全部ムカつく!でっかい落とし穴に落ちて、地球の裏側まで行っちゃえばいいのに!そしたらすぐに蓋をして、絶対戻ってこられないようにしてやるんだから!」


怒りにまかせてダンッと右足で畳を踏みつけると、ハンガーに吊るしたブレザーがバサリと落ちる。


「あー、ほら落ちた!なんなのもうっ!全部先生のせいだ!こうなったらツルツルの呪いをかけてやる!前からも後ろからも攻められて、すべてツルッツルになってしまえー!」


鼻息荒く畳に落ちたブレザーを拾ってかけ直すと、襖を開けてリビングにいるお兄ちゃんに言った。
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