対象外でも恋咲く
企画課に特別な用事のない弘人だったが、紗和に行くと言った手前、行かないことは出来なく企画課に足を踏み入れる。

弘人の存在にいち早く気付いたのは弘人よりも3つ年上の女性社員だった。その社員は弘人のことを気に入っていたので、素早く近付いて、弘人の肩を軽く叩く。


「あらー、小沢くん。どうしたのー? 元気ー?」


「ははっ、元気ですよ。坂野さんはいます?」


「あー、今日はお休みしてるのよ。お子さんの保育参観とかで。なんか急用だった? 私で出来ることなら」


「いえ、急ぎではないので明日にでもまた来ます。ありがとうございます」


弘人は、腕を掴む女性社員に笑顔で礼を言い、さらりと掴まれた腕をといた。女性社員から漂ってくる強めの甘い香りに悪酔いしそうだった。

企画課から廊下に出て、大きく息を吐く。礼を言ってから息を止めていたのだった。

そのとき、ふと思い出す。資料室で綿ボコリを取るために近寄った瞳の香りを……。
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