対象外でも恋咲く
瞳からはふんわりとした柔らかい花のような香りがしていた。あの香りは落ち着く……と。


弘人は営業1課に戻り、瞳のデスクに手を置く。


「えっ?」


文書を作成していた瞳の手が止まり、顔を隣りに上げる。そこにあった弘人の顔を見て、瞳の心臓は跳ねた。


「これ、高畠さんのじゃないですか?」


弘人が置いた手をどかすとそこから大きめな水色のゼムクリップが出てくる。瞳が資料室を出て行ったあと、足元に落ちていたので弘人が拾った。


「あ、ほんと私のだ。気付かなかった。ありがとう」


「いーえ。どういたしまして」


弘人は瞳に微笑んで自分のデスクに向いた。瞳は弘人の笑顔にドキドキしてしまい、胸の前で両手を合わせてゆっくりと息を吐いた。

今まで弘人に抱いていなかった感情が出てきたことを認めざる得ないと感じた。


「近々恋をするわよ。相手はあなたよりも年下のいい男で同じところに働いている」という占い師の言葉が脳内に浮かび……相手って、小沢くんなの? と考えた。


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