対象外でも恋咲く
弘人のほうが1年先輩ではあるが、紗和は弘人に対して、強気な態度を取ることが多い。

童顔な弘人が年下に見えてしまうことが、度々あるからだ。仕事上では弘人を頼りにすることはあるけれど、尊敬するまでにはいかない。

弘人も紗和に対しては、後輩というよりも友達に近い仲間だという意識を持っていて、営業1課の中では一番気を使わない相手となっている。

だから、年下だと分かっていてもつい甘えてしまうこともある。


そして、それからまた1週間後、弘人と紗和は工場の最寄り駅で待ち合わせていた。

先に着いたのは紗和。いつもよりも1時間早く起きたが、電車の中で寝たので頭はスッキリと冴えていた。

紗和が着いてから10分後に弘人が到着する。


「おはよう。さすが菊池さん、早いね」


「おはようございます。良かったら、どうぞ。じゃあ、行きましょうか?」


紗和は喉が渇いたので、駅の売店でスポーツドリンクを購入した。そのとき、弘人の分まで買ったのは気のつく紗和ならではで、無意識に世話好きな面が発動されてしまった。

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