対象外でも恋咲く
恋はしないと決めていても
弘人と紗和は午前中の工場研修が終わり、駅に戻る道のりを歩く。

帰りもタクシーを使わなかった。5分ほど歩くと、前方から漂ってくるカレーの匂いに二人は鼻を動かす。タクシーに乗っていたら、気づくことのなかった匂いだ。


「お腹空きましたね」


「うん。何が食べたい?」


「カレーの良い香りがしますね」


「そうだよね! でも、カレーだと…」


弘人はカレーが食べたくなっていたが、紗和にご馳走するのがカレーだと嫌がられるかなと提案するのを躊躇う。


「カレーにしませんか? ものすごく食べたい気分なんです」


紗和はすぐそばにあるカレーハウスと書かれた店を指差す。躊躇う弘人の気持ちを感じ取ったようで、先に提案をした。


「本当にカレーでいいの? もっと…カフェとかイタリアンレストランとかでもいいんだよ」


「いいえ、カレーが食べたいんです。小沢さんは嫌ですか?」


「いや、俺も食べたいと思ってた。じゃあ、ここに入ろうか」
< 39 / 107 >

この作品をシェア

pagetop