対象外でも恋咲く

「ほら、小沢さんも見てくださいよ！ほんと似合ってますよね？」


背中を向けていて、見ることをしない弘人の肩を紗和は軽く叩いた。

話を振られたら、無視は出来ないし、避けてもいられない。弘人は振り向いて、瞳を見た。


「ああ、ほんとだ。うん、似合っていますよ」


感情のこもっていない感想を述べて、クルリとまた背中を向けようとしたが、紗和に止められた。


「ちょっと、小沢さん。何ですか、その冷たい反応は？」


「あ、菊池さん、いいのよ。もうすぐ始まるし、私もやることあるから」


瞳は、弘人と向き合って話をするのが気まずくて、いそいそと弘人の真後ろにある自分のデスクに座る。

振り返った弘人は、瞳と視線を合わせなかった。瞳は弘人の目を見たが、意識して合わせないようにとしているのが分かり、胸が痛んだ。

冷たい態度の弘人に紗和は小声で話す。


「一体何ですか？ 高畠さんと何かありました？」