しましまの恋、甘いジレンマ。

「確かに最初から君のことは知ってた。けど、今までのことは俺の意志だ。
指示されてたわけじゃない、あくまで道筋を作ってもらっただけなんだ」
「……」
「君に大嫌いだと言われて、生きてきた中で一番ショックだった」
「……大げさです」
「君が好きだ。君にも俺を好きになってほしい」
「でも全然そんな事……、ウソっぽい」
「嘘じゃない。ずっと君に本当の気持を話したかった。けど、今の生活が
楽しくなってしまって。壊したくないと思って、ここまで来てしまった」
「顔がウソっぽい」
「そっぽ向いて顔が見えますか?……、…志真。お願いだ、俺を見て」

ひどい顔をしているからずっと彼に見られないように顔をそむけていた。
けれど徐々に視線を知冬へ向ける。
彼に手を掴まれて。そんな今更な甘いセリフに踊らされる自分が居る。

やっぱり、馬鹿だ。

「……」
「志真。…もう一度、はじめからやり直そう」
「知冬さん。本気でそう思ってます?親への義理とかで」
「親に義理立てするほど出来た人間じゃない」
「自分で言っちゃうか」
「君の返事がハイなら一緒に家に戻ろう。イイエなら何時間でも口説く」
「何その選択肢。……、…お腹すいたから何か買ってから、帰りましょう」

志真の返事を聞いて知冬は少し微笑み、ぎゅっと彼女を抱きしめる。

「知冬さんっも、もう!こんな所でっ」
「帰ろう。帰って二人できちんと気持ちを確かめあおう」
「そ、そうですね。まだ少し混乱しているから、ちゃんと話し合いましょう」
「セックスでは駄目ですか?」
「せ。せ?!だ。だめ。だめ!そういうの駄目!あ。何処を触って…離れて!!」

あれ、私、こんな情熱的な人に恋してたっけ?

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