しましまの恋、甘いジレンマ。


安心してしまったせいか思い出したように空腹が襲ってきた。
だけど流石にこんな遅い時間にがっつりお弁当は重たいからと
コンビニで菓子パンを買って帰る。
明るところで顔を見られるのは恥ずかしいから知冬に買ってきてもらって。

並んで歩く距離間は何時もと一緒。
ただ唯一違うのはぎゅっと手を繋いでいるということ。

志真の中の混乱が少しずつ収まっていく中で、ようやく帰宅。
荷物をおろし着替えるより先にお茶を沸かしてパンを食べる。


「……」
「……」

1歩踏み込む。2歩逃げる。

「……」
「……」

2歩踏み込む。4歩逃げる。

「……」
「志真?どうした?…何で避ける?」
「な、何か…何か!」
「え?ナンカ?ナンカって何ですか?」

だっていきなり肩を抱こうとするすんだもの、そりゃ逃げるでしょう?

ナンカ、貴方に狙われている気がするんだもの。

主に体を。

「落ち着いて。知冬さん、ドウドウ。ドウドウ」
「俺は落ち着いてますが」
「……じゃあそこに座ってて。動かないで」

気がするというか厳密に言えばソレに誘われたけど。
改めてソレを口にしたら顔から火が出そうなのでこらえる。
全てが仕組まれた事だと知って落ち込みまくって泣き続けたのに

その夜には知冬とソウイウコトとか無理です。

ただでさえ情報が追いつかなくて頭がパンクしそうになっているのに。

「……」

志真に来るなと言われて不服そうにパンをかじる知冬。

「……今日はお風呂無理そうですね」
「そうですね」
「明日は仕事休んでゆっくりします。それから、両親とも話をします」
「俺も行きます」
「大丈夫ですよ、もう泣いたりしないから」
「俺達の事を報告しないと。別の男とお見合いなんてされたら困りますから」
「……もう、しないと思いますけど。ね」

おばさんと話をして、知冬の気持ちを伝えられてもう誰も怒る気はない。
分かってて笑ってた両親にはちょっとくらいは文句もいいたいけれど。

「志真」
「はい。は…ハイストップ!それ以上こない!」
「まだ怒ってる?」
「怒ってないから来ない!駄目!ノータッチ!」

話すこともなくなってパンを無心で食べていたら
いつの間にか近づいている知冬。
まるで部屋で虫でも見つけたかのように慌てて逃げる志真。

「傷つけてしまったお詫びを」
「今度ごはんでも奢ってくれたらいいですからっ」
「嫌い?」
「嫌いじゃないです。無いから、お願い。…そんな見つめないで」

どうしよう、二人でゆっくり気持ちを整理する所か余計にパニックになるよ。
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